完全自社製キャリバー 「MP1」
自分たちのムーブメントを作ろう。
かねてからの夢に手をつけ始めたのは2013年頃だったが、紆余曲折を経て、それが完成したのは2024年の春。
途方もない時間が掛かったのは、既存部品の使用をルビーやゼンマイといった資材に限定し、その他のすべてを自作することにこだわったからだ。
スイス製にしろ国産にしろ、ベースムーブメントを使うこと自体に問題があるわけではない。
実際に世の中のほとんどの時計はそうして作られているし、独立時計師と呼ばれる者たちの時計ですら、本当の意味ですべてが自作されているものは極く一部。
ベースムーブメントの転用は、「より現実的な手法」として認知されている。
しかしわがままな私は、どうしても真正のオリジナルムーブメントを作ってみたくて、我慢ができなかったのだ。
「MP1」の特徴は、いつまでも使えること、つまり超・長寿命。
どう作ると何10年かで傷んでしまうか? どうなっていれば100年経ってもビクともしないのか?
30年以上続けてきたアンティークムーブメントの修復は、時には大きな痛みを伴いつつ、私にたくさんのことを教えてくれた。
精密機械でありながら長寿命、なおかつ、手仕上げならではの工芸的美しさを併せ持つこと。
そうでなければ、消費型の工業製品となんら変わりがない。
身にしみたすべてを活かして作り込み、現代から未来へ、いつまでも愛され続ける時計の心臓、それがMP1だ。